この記事はロケホン編集部が作成し、監修者・角谷 貴浩(株式会社ロケットモバイル 代表取締役)へのインタビューをもとに構成しています。
※本文中の「角谷さん」の発言は、2026年7月に実施したインタビューの内容です。
格安SIMの記事は、世の中にあふれています。
ただ、その多くは「外から見た解説」です。
料金表とスペック表を並べ替えたページを何枚も読んで、結局どれを選べばいいのか分からなくなった経験はないでしょうか。
そこでロケホンでは、実際に格安SIM(ロケットモバイル)を提供している会社の代表であり、本サイトの監修者でもある角谷さんにお話を伺いました。
回線を仕入れて提供する側からは、料金表には出てこないものが見えています。
格安SIM選びで確認すべきは、以下が重要です。
- 自分の利用環境と利用状況
- キャンペーンの条件とタイミング
- 契約の縛りと解約条件
回線の速さを比べる前に、まず自分の使い方を把握することが、いちばん失敗しない順番です。
この記事では、その3つがなぜ重要なのかを、提供する側の実情とあわせてお伝えします。
「自分の成績のために売っていた」16年で変わった視点
角谷さんは、インターネット回線の販売に16年携わったあと、現在は格安SIMを提供する会社の代表を務めています。
売る立場から提供する立場へ移ったことで、何が変わったのか。
まずはその視点の変化から伺いました。
編集部|回線販売の最前線に16年携わってこられたご経験は、格安SIMを提供される今のお立場で、どのように活きているとお感じですか。

一番最初に販売を始めたときは、正直、自分の成績のために——というような売り方をしていたと思います。
ただ、十何年も経つと、通信の環境というか、状況そのものがすごく大きく変わってきていて。
ユーザー様がご自身で得られる情報、取りに行ける情報もすごく増えてきています。
ですので今は、自分の成績だとか会社の実績よりも、いかにユーザー様に良い環境で、より安く使っていただけるか。
そこに重きを置いて活動している形ですね。
編集部|売る側から、提供する側になって、見え方が変わったということでしょうか。

情報が手に入りやすくなったからこそ、「売り手が勧めるもの」ではなく「自分に合うもの」を選べる時代になった、ということでもあります。
以降は、その「自分に合うもの」をどう見極めるかについて伺っていきます。
回線ごとの傾向はある。ただし一概には言えない
回線ごとの体感品質について、角谷さんの答えは「一概には言えない」でした。
地域と利用環境によって変わるためです。
ただし、そのうえで回線ごとの傾向はあると話します。
そして「品質への不満」の多くは、品質そのものではなく別のところから生まれている、という指摘もありました。
「なんとも言えない」が、正直な答え
同じ回線でも、住んでいる地域と使う環境で体感は変わります。
そのため「この回線ならこう」という言い方はできない、というのが提供する側の答えでした。
編集部|ドコモ・au(KDDI)・ソフトバンク・楽天モバイルの4回線を実際に提供される中で感じる、回線ごとの実情や体感品質について教えてください。

やはり地域だったり、ご利用環境によって変わってくるので、「なんとも言えない」というところが答えではあります。
裏を返せば、口コミの「速い・遅い」がそのまま自分に当てはまるとは限らないということです。
傾向はある:カバー範囲・混雑・料金
それでも、回線ごとに出やすい傾向はあります。
角谷さんが挙げたのは、カバー範囲・混雑時の強さ・料金の3点でした。

例えばドコモの回線であれば、基地局のカバーがすごく範囲が広いので、地方だったり郊外だったり、こういったところでも比較的安定して使えるようなことが多かったりします。
auの回線も同じように、エリア自体は広かったりはします。
速度面でも、安定した評価を得やすい傾向はありますね。
一方で、例えばソフトバンクの回線で言うと、街中、ビル群の中では少し弱かったり、混雑の時間帯によっては繋がりにくかったりという場面はあります。
ただ、料金面でメリットが出やすかったりするところはありますね。
あとは楽天モバイルに関しては、エリア自体は順次拡大はしていっているものの、場所によっては実際の回線ではなく、パートナーの回線に切り替わるというところがあったりするので。
利用するエリア、よく使うエリアによって体感が変わりやすい、というのはあるかもしれないですね。
つまり「安定を取るか、料金を取るか」という選び方になります。
自分がよく使う場所が郊外なのか都心のビル内なのかで、優先すべきものは変わります。
なお、ロケットモバイルで実際に選ばれている回線は、ドコモ85%/au9%/ソフトバンク3%/楽天3%という比率です(ロケホン編集部調べ)。
安定性を重視して選ばれる方が多い、という実態がここに表れています。
不満の多くは「期待とのギャップ」から生まれる
品質への問い合わせは、実際の品質よりも「期待していた品質」との差から生まれています。
これは提供する側でなければ見えない話でした。
編集部|お問い合わせやトラブルが多いのは、どういった内容でしょうか。

「ドコモなのに」みたいなお問い合わせは、よくいただくかもしれないですね。
評価の高い回線ほど、期待値も高くなります。
だからこそ、評判の良し悪しだけで決めるのではなく、自分がよく使う場所と時間帯でどう振る舞うかを見ておくほうが確実です。
大きすぎるプランを契約している人が、圧倒的に多い
プラン選びで後悔が多いのは「足りなかった」ではなく「多すぎた」でした。
念のため大きいプランにしておく、という心理が働くためです。
では、外さないためには何を見ればいいのか。
角谷さんが挙げたのは、平均GB数ではない別の見方でした。
後悔は「多すぎた」に偏っている
使い切れていない方が圧倒的に多い、というのが提供する側から見た実態です。
編集部|GB・プラン選びで後悔されやすいのは、「多すぎた」と「少なすぎた」、どちらが多い印象でしょうか。

心理的に「念のため大きいプランを契約しておく」というユーザーさんが、非常に多いということだと思います。
使い切れていない方が圧倒的に多いと思いますね。
「足りなくなったら困る」という不安が、毎月の固定費に乗り続けている状態です。
見るのは平均GBではなく「Wi-Fiが使えない時間」
確認するのは2つ。自分の利用量と、Wi-Fiが使えない時間にどれだけ通信するかです。
編集部|選び方を外さないために、確認しておくとよいことはありますか。

利用の量というのは、ご自身が使っている端末である程度確認はできますので、まずそこを確認いただきたいというところが一つです。
あとは、自分がどこでよく使うか、ですね。
ご自宅で使うのであれば、ある程度Wi-Fiがあったりしますので、そういったところを考慮する。
職場のWi-Fi環境、学校のWi-Fi環境もあります。
自分がWi-Fiを使える時間がどれくらいあるのか。
逆に、Wi-Fiが全く使えないけれどデータを必要とする場面がどれだけあるのか。
そういった自分の使う特性を把握されて、実際に容量が必要なところを把握していただく。
そこが最優先ですかね。
ポイントは「先月何GB使ったか」ではありません。
そのうちどれだけがWi-Fi経由だったかです。
同じ月20GBでも、大半が自宅のWi-Fiなら、契約するデータ量はずっと少なくて足ります。
キャンペーンで見るべきは金額ではなく「時期」と「条件」
キャッシュバックやポイント還元で確認すべきは、金額の大きさではなく「時期」と「条件」の2つでした。
インタビューでは業界全体を見たキャンペーンの話として伺っています。
見落としやすい条件と、不満が起きるタイミングまで踏み込んでお答えいただきました。
確認するのは「時期」と「条件」の2つ
金額や還元量が同じでも、受け取れる時期と条件で価値は大きく変わります。
編集部|キャッシュバックやポイント還元のキャンペーンに惹かれる前に、提供者の目線から確認しておくべきことはありますか。

ここをしっかり確認いただくところですかね。
いかに金額だったり還元量が多かったとしても、その時期のタイミングによっては、来月もらえるものなのか、1年後なのか、もしかしたら2年後なのか。
みたいなところで、だいぶ変わってくるでしょうし。
条件の部分も、何もしなくても勝手にもらえるものなのか。
何か自分からアクションを起こさなきゃいけないのか。
自分からアクションを起こすだけでなく、提供キャリアから来るものに対してアクションを起こさなきゃいけないのか。
こういった条件に対してもしっかり確認をいただいて、もらい忘れができるだけないような環境にする。
実際にどれだけもらえるのか、というところをちゃんと確認いただくところが大事なのかなと思っています。
2年後に受け取る1万円と、翌月受け取る5,000円は、同じ価値ではありません。
金額を比べる前に、いつ・どうやって受け取るのかを見る必要があります。
「待っていればもらえる」が最大の落とし穴
高額なキャッシュバックほど、受け取りに自分の手続きが必要です。
そして、そこが最も見落とされています。
編集部|特に見落とされやすい条件はありますか。

「例えば1年11ヶ月後に、キャンペーン申請のメールが届きます」というイメージでお申し込みをされる方がいるんですけれども。
ただ実際は、きっかけは向こうから頂けるのですが、頂いたものに対して自分でいくつかのアクションを起こさなきゃいけない、みたいなケースが結構あったりします。
「待っていればいいものなんだな」と思いがちなんですけれども、実はその、自分から動かなきゃいけないという条件に関しては、ちょっと見落としがちです。
そこは注意いただきたいなと思いますね。
連絡が来て終わりではなく、そこから期限内に手続きをする必要がある——これが抜けると、条件を満たしていても受け取れません。
見落とされているのは「きっかけ」ではなく、その後です。
メールが届くこと自体は分かりやすいのですが、それを受けて自分が何をすればいいのかまでは理解されていない。
キャンペーンの条件を読むときは、「連絡が来る」で読み終えず、「連絡が来たら自分は何をするのか」まで確認しておきましょう。
「こんなはずでは」は契約の途中で起きている
不満が出るのは2年後ではなく、申し込みから契約に至る途中がもっとも多いそうです。
編集部|「こんなはずじゃなかった」というお問い合わせは、どのタイミングが多いですか。

ぱっとご条件を細かく確認せずにお申し込みをするんだけれども、実際にその申し込みが進んで契約に至るまでの中で、細かいキャンペーンの条件を聞いて「ああ、それは何か違うんじゃないか」とおっしゃる方が多いですかね。
つまり、条件は申し込んだあとに分かるのではなく、申し込む前に読めば分かるものだということです。
その多くは、事前に確認するだけで防げます。
申し込む前に確認する3つ
角谷さんのお話を、申込前のチェック項目に整理しました。
キャンペーンを見たら、金額の大きさより先に次の3つを確認しましょう。
- いつもらえるのか(翌月か、1年後か、2年後か)
- 自分で何かする必要があるか(申請フォーム・専用ページ・期限内の手続き)
- キャリアから届く連絡に、こちらが返す必要があるか(届いて終わりではないケースがある)
この3つが確認できないキャンペーンは、金額が大きくても保留にしておくのが安全です。
低速無制限は誰に向くのか:太陽光パネルと、ラジオ
低速無制限が向くかどうかは、法人利用か個人利用かで明確に分かれます。
ロケットモバイルは法人利用の割合が非常に多く、その具体例まで伺うことができました。
一方で「無制限」という言葉だけで選んでしまう方が非常に多い、という注意点も語られています。
ここは他では読めない、提供する側の実情です。
法人:継続的にデータを送る用途にハマる
ハマるのは「少量のデータを、常に送り続ける」用途です。
編集部|実際に低速無制限をご契約されているお客様は、どのような使い方をされていますか。

法人利用なのか、個人利用なのかというところで、だいぶ変わってくるなと思っています。
ロケットモバイルのユーザー様で言うと、法人でご利用いただく割合が非常に多いですね。
法人のところで言うと、もう明確で、継続的にデータの送信が必要なケースが、ハマるユーザー様という形になりますかね。
例えば多いのが、太陽光パネルをたくさん設置しているような企業様です。
その太陽光の発電量だったり、そういったデータを常に送信しなきゃいけないんだけれども、そういったデータは大した重いデータではないので、低速でも事足りる。
みたいなケースがハマる形ですかね。
逆に、防犯カメラのような、常に大容量の動画を送信しなきゃいけないような使い方だと、あんまり合わないというのが法人利用ですかね。
同じ「常時通信」でも、送るものが数値データか動画かで結論が逆になります。
💬 ロケホン編集部より
ロケットモバイルの契約では、プランのうち低速無制限を選ぶ方が約80%を占めています(ロケホン編集部調べ)。
法人利用が多いという角谷さんのお話は、この比率にも表れています。
個人:テキスト中心・ラジオや音楽なら合う
動画を見ないなら、低速無制限で足りるケースがあります。
編集部|個人の方ではいかがでしょうか。

こういったパターンは非常に合致すると思いますね。
あとはラジオだったり、音楽の再生のみだったり。
データの量自体は長く見れば使うんだけれども、瞬間的な速度はあまり使わなくてもいい、みたいなケースが合うのかなとは思っています。
編集部|個人でハマるのは、テキスト中心の方や、ラジオ・音楽を聴く方ということでしょうか。

あとは、Wi-Fiを組み合わせて、大容量は使うけれど自宅だとか会社でしか使わない。
移動中はラジオとか音楽のストリーミングでしか使わない、みたいな。
このWi-Fiとの使い分けで、Wi-Fiがない所での使い方がマッチするような方が良いのかなとは思いますね。
ここでも判断の軸は、第3章と同じ「Wi-Fiが使えない時間に何をするか」でした。
「無制限」の言葉だけで選ばない
「無制限」に引かれて、速度を確認せずに申し込む方が非常に多いそうです。
編集部|「無制限」で注意すべき点はありますか。

低速と謳ってはいるものの、あまり速度を気にされずに、無制限のところだけをフューチャーしてお申し込みされる、ご検討いただくという方が非常に多いんですけれども。
ご自身の使い方を一度見ていただいて、外出先などで動画を見るパターンがすごく多かったり、大容量の、すぐに仕事上で送らなきゃいけないような大きいデータがあるみたいな方で言うと、やはりあまり向いてはいないです。
ご自身のご利用環境をしっかり確認いただいて、「無制限」のところだけでなく、その速度もちゃんと見極めてご検討いただくというところが良いのかなと思います。
判断の順番は逆にしたほうが確実です。
まず自分が外で何をするかを決めて、それが低速で足りるかを見る。
外出先で動画を見る人、仕事で大きなファイルを送る人には向きません。
見落とされやすいのは「無制限」ではなく、その前についている「低速」です。
プラン名は最後まで読んで、自分の使い方が低速でも成り立つかを先に確かめてください。
混雑時は、通常プランよりストレスが少ない
もともと低速なため、混雑時のがっかり感は通常プランより小さいという回答でした。
編集部|人が密集している場所や、お昼の時間帯など、混雑時はどうでしょうか。

通常のプランを使っている時の、混雑で使えないという状況よりかは、比較的ストレスは感じにくいのかなと思いますね。
速いはずの回線が遅くなるとストレスになりますが、はじめから低速だと落差が小さい、という話です。
昼に速度が落ちることを不満に感じやすい方には、意外な選択肢になるかもしれません。
これだけ知っておけば損はしない、3つのこと
最後に、これから格安SIMを選ぶ人が知っておくべきことを3つ挙げていただきました。
いずれも、申し込む前に、お金をかけずに今日できることです。
3つを通して共通しているのは「比べる前に、自分を知る」という順番でした。
ここまでのお話の総まとめとしてお読みください。
1. 自分の利用環境・利用状況を把握する
ここが分からないと、そもそもどのプランが得なのか判断できません。

やはりそこが把握できていないと、どのプランを選んだら得なのか、大容量がいいのか、小容量がいいのか、高速がいいのか、低速がいいのか、みたいなところの判断がつきにくいです。
どういう状況でご自身が使っているか、というところを確認いただくのが一つですかね。
「大容量か小容量か」だけでなく、「高速か低速か」もここで決まります。
2. キャンペーンは条件とタイミングを見る
金額に惹かれる前に、別の軸で条件とタイミングを確認します。

ここをしっかり確認いただくことですね。
金額だとか還元量に惑わされがちなんですけれども、そことはやっぱり別軸で、ご条件・タイミング、こういったところも確認いただくと、自分にあったキャンペーンが受けられるのかなというところです。
金額の比較と、条件の確認は別作業だということです。
3. 縛り・解約条件・違約金を事前に確認する
契約後の出口を先に見ておくと、想定とのズレを防げます。

こういったことを事前に確認いただいて、ご自身の考えられる環境とのギャップを埋めるというところが、大事なのかなと思っています。
入るときの条件だけでなく、出るときの条件も同じだけ確認しておきましょう。
迷うなら、縛りの薄いプランで試す
それでも決めきれないときは、試してから判断する方法があります。

迷っているのであれば、一度そういったプランで、ご自身の環境に合っているのかなというのを、実際に使ってみて確認いただくというのも大事なのかなとは思います。
考えて決めきれないものは、実際に使うといちばん早く分かります。
縛りの薄いプランを選べば、試すこと自体のリスクも小さくできます。
まとめ:比べる前に、自分の使い方を知る
取材を通して一貫していたのは、「まず自分の使い方を把握してください」という一点でした。
どの回線が速いか、どのキャンペーンが高額か。
比較する前に見るべきものがある——提供する側から見ると、そこでつまずいている人がいちばん多い、ということなのだと思います。
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